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東京演劇集団「風」

 この秋、すてきな出会いに恵まれた。信楽青年寮に住むダウン症の村田清司さんが描いた絵本のボローニア国際児童図書展入賞を祝う会の三次会。それまで知る由もなかった東京演劇集団『風』の女優柴崎美納さんと隣り合わせた。時に火傷しそうな熱気が伝わるこの人の話は、都会育ちにしては土の薫りがし、素直に心の中に入ってくる。

 美納さんは出演しないが、僕も関心の深かった「星の王子さま」を信楽で上演するという。この人の感性と劇団のスタンスが僕の心を動かし、納得できたら名古屋で一般公演をと、テレビ局の企画部長を誘い2ヶ月後再び信楽に向かった。

 信楽高原鉄道の列車事故から1年半、重苦しい日々が続いた町の人たちに希望をと、地元の『信楽・風と土の会』の企画により、11月初旬、『風』によるミュージカル「星の王子さま」が上演された。

 ステージの前で踊りだす町の子どもたち、大声で「きれいなネエちゃんやナー」と役者を評する人、突然に株式市況の物真似を始める信楽青年寮の人、「小さな声で」と優しく諭す人。そんな中で苦言を呈する人もなく舞台は進行していく。

 『風』の黒崎制作部長は、「芝居は見せるものではなく、観客と一緒に演ずるもの。役者と観客は客席の様々な反応を含め、あるがままの時を共有する。それだけに公演までの“出会い・ふれあい”を大切にしたい。」と話していた。

 『風』は、劇場公演のほか全国の学校公演も行う30人足らずの劇団。商業化されたメジャーな劇団にはない、マイノリティーの輝きを持っている。

 美納さんは、僕が89年5月号のこの欄で紹介したノーマライゼーションの原点とも言えるチェコ映画『スイート・スイート・ビレッジ』を福祉月間中央行事で見て感動したという。価値観を共有できたことが嬉しい。きっと多くの人に伝えてくれるだろう。この人と話していると「人権」って難しいことではないような気がしてくる。

発行日:1992年(平成4年)11月15日
掲載誌:「AIGO」第426号に寄せた文章より一部抜粋
発行元:日本知的障害者福祉協会